人と環境と木のはなし

コラム

ブナの木の車椅子

木の質感や見た目に感じる優しさは誰もが認めるところでしょう。その特性を生かしたといえるのが木製の車椅子です。「軽くて強く」「やわらかさを感じ」「寒い時でも金属のように冷たくなく、触った感じがいい」と、木という素材は、高齢者やけが人、体の不自由な人が使うのに適しているのではないでしょうか。 長時間身体に触れる機会が多い木製の車椅子は、使う人に安心感と一体感を与えてくれます。

ブナの木の車椅子
写真:秋田木工株式会社

インテリジェントビルで活躍する大型木製水槽

超高層ビルや最新設備のある大型施設など、大勢の人が集まる建物では飲料水などを一旦大きな水槽に集めて利用します。この水道水の受水槽として木製のタンクが注目を浴びています。木製水槽のメーカーにユーザーから「水がおいしく感じる」との声が寄せられることもあるそうです。
木製水槽の内側は塗装せず材を無垢のまま、接着剤を使わず金属製のベルトで締めて組み立てるので中の水が木材以外に触れることはありません。メーカー側は「材質の木材が有機質で水になじみやすい」「木材には適度な保温力があり、保冷効果が期待できる」としています。木の特性を少しでも知っている人が聞けば何となくうなずける効果です。コンクリートむき出しの機械室にある大きな飴色の木タンクは、毎日ビルを管理する人たちにも「ある種の安心感を与える」と、好評のようです。

インテリジェントビルで活躍する大型木製水槽
写真:日本木槽木管株式会社

子ども達の生活を考えると納得-木造校舎

子供たちは学校でどのような一日を過ごしているのでしょうか。想像してみましょう。先生の話に耳を傾ける静かな教室。音楽の時間は、歌ったり演奏したり、レコード鑑賞をしたり。体育館では、跳ねたり跳んだり、あるいは床に座って仲間のゲームを見ているかもしれません。休み時間は、廊下から昇降口を抜けて外に駆け出していくでしょう。廊下や階段で友達とふざける子供もいるでしょう。
このような、賑やかで活発な学校生活を送る子ども達ですから、彼らを包む教室や体育館、廊下や階段には、肌触りが温かく、転んだときの衝撃を吸収し、声や楽器の音を程良く響かせる木材が使われていれば安心です。
また、視覚、聴覚を通じてゆったりした気分になれる木のある教育環境では、子供たちに疲労が少なく、イライラすることも少ないなど、情緒面によい効果があるという調査結果も発表されています。木造校舎ではインフルエンザによる学級閉鎖率が低いという報告もあります。
こうした木の効果に対する学校現場の関心も高まり、近年、木造校舎を建設したり、カウンセリングルームを木質化したりする例が増えてきました。
また、環境ホルモンの心配がないということで、木の給食器を使う学校も見られるようになってきています。

子ども達の生活を考えると納得-木造校舎

日本人の木材使用量は・・・

私たち日本人は、昔から生活の中に木をうまく取り入れ、生活をより豊かに、快適になるようにしてきました。木は日本の歴史を語る時なくてはならないほど私たち日本人と深い関わりあいを持ってきたのです。
木の文化の国ともいえる日本ですが、だんだんそうではなくなってきています。現在、国民一人当たりの木材使用量は0.9立方メートル/人です。いくつかの木材生産国と比較してみるとその使用量は低いものです。
環境に負荷の少ない、再生可能な資源として木材が注目されている今、私たちの祖先が木とともに生きてきた知恵や経験を見直し、現代生活に取り入れる創意工夫が必要かもしれません。

主要国の用材の生産量と消費量(試算用)【1996年】
国名 消費量(推定値)
(百万立方メートル)
生産量
(百万立方メートル)
自給率 一人当たり消費量
(百万立方メートル)
アメリカ 440.5 406.6 0.92 1.63
日本 111.4 22.5 0.20 0.89
カナダ 81.2 181.3 2.25 2.74
オーストリア 10.7 11.3 1.06 1.31
ドイツ 50.2 35.5 0.71 0.61
フィンランド 33.4 42.5 1.27 6.52
イギリス 24.8 7.0 0.28 0.42

住宅廃材のリサイクルと炭素固定への期待

地球温暖化問題や近年身近な問題として様々な環境問題が取り上げられています。いかに環境に負荷をかけずに社会生活を営んでいくか、21世紀の課題です。それを乗り切るヒントが私たちの過去の木材利用に見られるのではないでしょうか。また、木材資源を見直すヒントもそこにあるように思います。木材は「伐ったら植える」という再生の原則を守れば半永久的に利用できる唯一の資源です。また、製品化された木製品(住宅や家具など)は、リサイクルや廃棄の方法を研究することで、化石燃料を使った製品より環境負荷を少なくしながら再利用できる資源として期待できます。

住宅廃材のリサイクルと炭素固定への期待